Illustration・Peppermint green
海辺に降り注ぐ光を、ペパーミント・グリーンのフィルター越しに眺める。
眩しさよりも、淡い光。
熱気よりも、風。
鮮やかな夏の記憶から少しだけ色を抜くと、そこには現実とも夢ともつかない、静かな海辺の時間が残る。
ペパーミント・グリーンは、海や空の色であると同時に、清涼感や透明感、そして遠い記憶のような曖昧さを持つ色でもある。
輪郭を持った風景を描きながら、目指したのは「場所」ではなく、その場所に漂っていた空気。
ベクターによる明快な形の中に、ラスターで淡いグラデーションを重ね、
硬さと柔らかさ、人工的な線と自然の光をひとつの画面に共存させた。
それは、どこかに実在する海辺ではなく、記憶の中にだけ残っている海辺。
夏の光が少し褪せたあとに残る、ペパーミント・グリーンの静かな風景。
淡い光の中に残る、夏の記憶。

眩しさを忘れた、海辺の夏。

風の色を、ペパーミント・グリーンで。

遠い夏が、淡い緑にほどけていく。

海と記憶のあいだにある色。

光が静かに褪せていく海辺。

それは海の色というより、
海辺で過ごした時間の色なのかもしれない。
鮮やかだったはずの夏を、
少しだけ遠ざけて眺めてみる。
輪郭は残しながら、色を薄くする。
光を滲ませ、景色の境界を曖昧にする。
すると風景は、場所ではなくなる。
いつか見た海。
もう戻れない夏。
記憶の底に沈んだ、名前のない一瞬。
そんなものが、
淡い緑の中から静かに浮かび上がってくる。
眩しさの向こう側にある、もうひとつの夏。
夏の終わりを包む、淡い緑。

どこにもない海、記憶の中の海。

潮風の記憶を、淡い色彩に。

眩しさの向こうに残る、静かな風景。

