夏が少しだけ遠ざかったあとのプール

夏のプールといえば、水面に反射する眩しい光、白いプールサイド、そして抜けるような青空。そんな「夏の記憶」を描いた爽やかな風景を思い浮かべる人が多いと思う。

ところが、このイラストに描いたのは、夏が少しだけ遠ざかったあとのプール(笑)。

賑やかな声も消え、水面だけが静かに揺れている。強烈な太陽や鮮やかな色彩ではなく、どこか褪せたような淡い色で、季節が過ぎていく時の寂しさを描いてみた。

表現は、水彩画のようでいて、実際にはアナログの水彩絵具を使っていない。デジタルで描いた「雰囲気水彩」。水彩特有のにじみや柔らかさを借りながら、記憶の中に残っている夏の風景のような曖昧な色彩を目指した。



夏の記憶だけが、水面に揺れている。



誰もいないプールに、夏がまだ残っている。


若い頃から、永井博氏と鈴木英人氏という二人のレジェンドを、ハンパないほど尊敬している。

永井博氏の作品にある、アクリル絵具とエアーブラシが生み出す完璧な空気感。『A LONG VACATION』のジャケットをはじめ、あの時代の「夏」そのものをデザインしてしまったような世界観は、今見てもまったく色褪せない。

一方、鈴木英人氏の初期作品で使われたパントーンオーバーレイによる表現も、当時のデザイン制作を知る者としてはたまらない。透明なフィルムを色ごとに重ねていく作業は、まるで版下を制作するような緻密な世界だった。近年のE.M.グラフへと続く独自の表現も含め、お二人とも「イラストレーター」であると同時に、版画的な表現を極めたアーティストだと思う。


夏が去ったあと、水面は静かだった。


色褪せた夏が、まだここに浮かんでいる。



誰もいない場所ほど、思い出は騒がしい


あの日の青は、どこへ行ってしまったのだろう。



今回描いたプールには、あの完璧に晴れ渡ったカリフォルニアの空はない。エアーブラシの眩しいグラデーションも、鮮烈なパントーンカラーもない。あるのは、夏が終わったあとの静けさだけ。あるのは、夏が終わったあとの静けさだけ。楽しかった季節ほど、過ぎ去ったあとに少し寂しくなる。誰もいないプールを眺めながら、そんなことを感じてもらえたら、この「夏が過ぎたプールのある風景」は成功なのかもしれない。


光のあとには、いつも少しの寂しさが残る。


忘れたはずの季節が、水面に浮かんでいる。


ちなみに、永井博氏が描いたカリフォルニアの風景の中に架空のショップを登場させたBEAMSの広告も、若い頃から強烈に印象に残っている。その影響なのかどうかは分からないけれど、オレはいまだにBEAMSをよく着ている。

先日もスーツのセットアップを衝動買いした(笑)。

夏は過ぎても好きなものへの憧れだけは、なかなか色褪せない。


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