夜のしじまに流れるジョン・コルトレーンの It’s Easy to Remember
ジャズには、聴く順番だの、知っておくべき名盤だの、
ずいぶんと面倒な作法を語りたがる人がいる。
けれど、音楽を聴くのに資格試験はいらない。
ジャケットに惚れたら買えばいいし、最初の一音で好きになったら、それで十分だと思う。
この曲は、そんな理屈をひとまず脇に置いて、静かに耳を傾けたくなる一曲。
コルトレーンのサックスは、声高に何かを訴えるわけでもなく、
夜の空気に溶け込むように、ひとつひとつの音を丁寧に置いていく。
そこには華やかな技巧を見せつけるよりも、言葉にできない感情をそっと手渡すような温度がある。
忘れたつもりの記憶や、もう戻らない時間まで、ふいに連れてきてしまう音楽というものがある。
今夜は難しいことを考えず、グラスでも傾けながら聴いてみる。
好きか嫌いか。それだけでいい。
