絵の具は盛らずに、質感を盛る。
アナログのテクスチャーアートは、アクリル絵の具にペーストを混ぜ、ナイフで塗りつけ、
凹凸を作り、乾くのを待つ。素材を盛り、削り、重ねる。手は汚れるし、
失敗すれば簡単には元に戻らない。なかなか原始的で、そこが面白い。
今回は、その立体的な質感や塗り跡、偶然が生む表情をデジタルで再現してみる。
Photoshopのブラシやテクスチャー、レイヤーの描画モードを組み合わせ、
ペーストの厚みやナイフの跡、絵の具が重なり合う表情を作っていく。
凹凸そのものが存在するわけではない。陰影や色ムラ、エッジの強弱を使い、
平らな画面に立体感を錯覚させるのである。
凹凸は、デジタルで捏造する。

絵の具はない。質感はある。

アナログなら絵の具を盛り、デジタルならピクセルを操る。乾燥待ちもなければ、
気に入らない部分はレイヤー単位で修正できる。ずいぶん便利になったものだ。
もっとも、ブラシを変え、フィルターを試し、レイヤーを重ねたところで、
作品に深みが出る保証はない。便利な道具が増えたぶん、言い訳の選択肢も増えただけかもしれない。
素材と格闘するアナログ。画面の中で質感を捏造するデジタル。
さて、どちらが本物らしいか。どこまで騙せるかを考えるのも、デザインという名の道楽である。
乾かす手間まで、レイヤーの中。

平面なのに、盛った顔をする。

