Shall we ダンス?とフォロー・ミー


久しぶりに「Shall we ダンス?」を観た。

役所広司演じる杉山が、電車の窓から見えるダンス教室の女性に惹かれ、社交ダンスを始める話だ。

結婚して、子供が生まれて、念願の家まで買った。
傍から見れば、申し分のない人生。ところが家を買ったあたりから、なぜか心に小さな隙間ができてしまう。

人生、面白いものである。
幸せになるために家を買ったのに、家を買ったら「オレの人生、これで終わりか?」なんてことを考え始める。

そして杉山は、毎朝電車の窓から見える女性を気にするようになる。

オレなら……まあ、同じことをするかどうかは別として、気持ちはわからないでもない(笑)。

映画の中で特に好きなのが、杉山と草刈民代演じる舞との会話。

「あなたが目的じゃない。ダンスをするためにここに来てるんだ」

最初は彼女に惹かれて始めたダンスが、いつの間にか本当に好きになっていた。

これ、結構大事なことだと思う。

何かを始める理由なんて、最初は不純でいい。
女でも、金でも、見栄でも、暇つぶしでもいい。
始めてしまえば、いつの間にかそれ自体が面白くなることがある。



ところで、この映画を観ていて、もうひとつ気になったことがある。

柄本明演じる探偵の事務所に飾られている映画のポスター。
それがキャロル・リード監督の「フォロー・ミー」だった。

ここに気づいた人、どれくらいいるんだろう。

「フォロー・ミー」は、妻の浮気を疑った夫が探偵クリストフォルーを雇うところから始まる。

探偵は妻ベリンダを尾行する。
しかし、追いかけているうちに、いつしか彼女の孤独に惹かれていく。

尾行する男。
一定の距離を保ちながら歩き続ける女。

この二人の「距離」が、なんともいい。

「Shall we ダンス?」では、電車の窓からひとりの女性を見つめる男。

「フォロー・ミー」では、街の中でひとりの女性を追い続ける男。

どちらも、最初は「見る」ことから始まっている。

そして、その視線の先にいる女性との距離が、少しずつ変わっていく。

偶然なのか、意識的な引用なのか。
そこまで深読みする必要もないのだろうが、映画好きというのは、こういうところを見つけると嬉しくなってしまう。

もっとも、本人が気づいていないところまで勝手に意味を見つけて悦に入るのも、映画好きの悪い癖ではある(笑)。



そして「フォロー・ミー」といえば、やっぱりジョン・バリー。

大げさに泣かせるわけでもない。
感情を説明するわけでもない。

ただ、街を歩く二人の後ろに音楽が流れている。

その音楽が、二人の間にある微妙な距離を、言葉以上に語っている。

ああいう映画音楽は、ずるい。

映画を観終わったあと、しばらく頭の中に残ってしまう。



どちらも「誰かを見つめること」から、自分の人生が少し動き始める。

映画って、結局そういうものなのかもしれない。

……などと、もっともらしいことを書いているが、要するにオレは、
またジョン・バリーが聴きたくなっただけなのだ(笑)

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